バントライン(仮称) 海賊 2010年03月29日 一味離散後100%捏造話。未完。でもあと3回分くらいは書き貯めアリ。原作で再登場する前に書かないといけない と思ったんだ…設定は以下↓・一年以上麦わらの一味が再会できておらず、全員バラバラにビブルカードに従って旅をしている設定です。・狙撃手が(もう)太っていません。・料理人が(もう)オカマじゃありません。・クロネコ海賊団がグランドラインにいます。・しかも独自設定/解釈にまみれてます。・その辺りのキャラしか出てきません。・一応サンウソ(?)・ネタ拝借元:筋少・サボテンとバントライン xxxxxあの日からどれくらいの月日が流れたのか、正しい所をサンジは覚えていない。だが、一人でいる間に一度誕生日を迎えたから、多分一年近くは経っているのだろうと思う。最初のうちこそ、皆どうしているだろう、無事だろうかと考えたものだが、今ではもう、そう心配することも少なくなってきた。この間の『その』ニュースを見れば船長が無事でいることはわかるし、それ以外の誰だって、そう簡単に死ぬわけがない。だって自分たちは空にも行ったし世界政府に喧嘩だって売った、海賊なのだから。心配ではないといえば嘘になるが―特にレディたちについては―、今、自分が心配した所で何も出来やしない。それよりは一刻も早く、この紙切れが示す方向へ向かって、全員が集まるのを待つほうが効率的だ。そう考えて、一人旅を続けてきた。飲食店でバイトをし、溜まった金で客船や商船に潜り込む。それの繰り返し。賞金首とは言え、やはりあの似てない顔絵ではやはり、少しの変装だけで気付かれる可能性はぐっと低くなる。今のサンジは前とは違い、常に伊達メガネをかけ、下ろしていない方の前髪を後ろに撫で付けるような髪型にしている。スーツも着ていないし後ろ毛も少し伸びたので、雰囲気はかなり変わっているだろうと自分では思っていた。とにかく、無事で一刻も早くサニー号へ。…とは思っているものの。何故自分は今、海軍支部の牢屋で手錠をかけられているんだっけ、と思うサンジであった。(そうだ、確かすっげェ美人がいて、声をかけたんだよな…)地下牢の冷たく湿った岩壁にもたれて、数日前のことを思い返す。町で自信なさ気にこそこそしていたキュートな美人。帽子を目深にかぶって顔を隠しているなんて勿体無いと思って、声をかけた。無視されても、でもきっと恥ずかしがっているだけだと思ったから、何度も声をかけた。そうしたら、美人がやっと振り返ってくれて、叫んだのだ。(「あなたが五月蝿くしているから、不審がって容疑者が逃げちゃったじゃない!!」…)張り込み中の、私服海兵だったのだ。顔がバレないように帽子を深くかぶり、気付かれないようにさりげなくこっそり動いていたのだ。(「お前もアイツらの仲間なのね!?」…って、こっちの話も聞いてくれねェし…)どうやら、ちょっとした大物が最近この町で捕まったらしく、その部下たちが大物を取り返すために蠢いているそうなのだ。その一味に、どうやらサンジは間違えられたらしい。(ったく…。迂闊に身元も喋れねェから、疑いも晴らせねェし…)今世間を騒がせている麦わらの一味だと知られることや、7700万の賞金がかかっていることを知られたら、こんな警備の甘そうな辺境の牢屋ではなく、もっと厳しい―例えばインペルダウンとか呼ばれるようなところとか―に移されてしまうかもしれない。だが、ただの旅人だと言うには、捕らえられてしまった際に、腕の立つところを見せてしまいすぎた。結果、レディに手を出せないサンジはその女海兵に捕まって手錠をかけられ、敢え無く地下牢に放り込まれてしまったのだった。「せめてあのキュートちゃんが見張りだったらなァ…」呟いてみるが、鍵のかかった格子の向こうの方で表情も変えずに突っ立っている強面の大男たちが華奢な美人さんになるわけもなし。「はァ…」ため息をつくしかないのだった。「景気悪い顔してんじゃないの、お兄さん」「…?」声がする方を、サンジは振り向いた。「よう、何かやらかしちゃったのかい?」すると、先ほどまでは気付かなかったのだが、同じ牢には先客がいたのだった。どこか嘲るようなニヤニヤ笑いを浮かべた、細長い男。目が大きいのに黒目が小さく、余り品の良さそうではない笑みを口元に浮かべていた。「…あんたは?」サンジは男の問いに答えることなく問いを返す。あまり、好きになれそうにない相手だった。男だし。「おれかい?」男は一層にやにや笑いを深くし、じゃらりと手錠を鳴らしながら、おどけた調子で自分の鼻を指差した。大きく首をかしげるしぐさで、くるりと巻いた緑の前髪が揺れる。「おれは、賞金300万の雑魚さ。酒場で酔って喧嘩したら、問答無用でブチ込まれちまった」「300万ねェ…」サンジは、疑いの目で男を見る。なよっとした雰囲気の細い男だ。ニヤニヤと笑っているばかりで、強そうにも、頭が良さそうにも見えない。だが300万かかっているというのなら、そこそこは腕も立つのだろう。「…今、あんたはおれを、300万には見えねェって思ったな?」「…」「今おれはネコかぶってるのさ。本気なんか出しちゃいない!」「…」サンジは無言をもって、それに答えた。「…まァいいや。あんたの方は?」「ん?」「賞金がいくらで、何して捕まったわけ?」「…美人がいたから口説いたら海兵だった」「何じゃそりゃァ!」瞬間、男は大爆笑。それを予感していたサンジは、鼻を鳴らして不快感を表すだけに留めておいた。「にゃははは、あんた面白ェな。気に入ったよ」「そりゃどうも」「で?」「?」「賞金は?」サンジは心の中で舌打ちをした。馬鹿げた話―事実ではあるが―で話を逸らすことで、その話題は過去のものと出来たかと思ったのだ。たとえ相手が同業者で、しかも格下の相手だとは言っても、素性も知れぬ相手に、そこそこ高価な自分の賞金額を教えたいとは思えない。しかし相手の男はニヤニヤとした、しかし油断のない目つきでサンジを眺めている。だんまりは、通用しそうにない。(仕方ねェ、騙すか…)どうせ、暇だからただ話でもして暇つぶししようと、そういう魂胆なのだろう。だとしたら、今ほんの一時程度ならば騙し通せるだろう。ずっと、この男とこの牢にいるつもりもない。そしてどうせなら男の顔を立ててやろうと、男より少ない金額を言ってやろうとした時だった。「…7700万ベリー」「っ!?」「そうだろう、『黒足』のサンジ?」声は、思ってもいない方からだった。ニヤニヤ笑いの男の、反対側の奥の壁。そこに、今まで気付かなかったもう一人がいたのだった。湿った暗さのなかに溶け込むように、さらに黒い男。気配を、まったく感じなかった。妙な手つきでかけているメガネを直し、サンジに見下すような視線をぶつけてくる。「へェ、コイツそんなに賞金高いんですか?」「ああ。麦わらの一味だからな」「あ、コイツも麦わらの?だけど見たことないですね」「当たり前だ、こんな場所まで届いた船の乗員が、4人というはずがないだろう」「…」サンジは、口を挟まずにその二人の会話を伺っていた。わかったのは、どうやら二人が仲間らしいということと、それから二人の喋り方で、眼鏡の方が格が上だということ。そして、自分がまだ『麦わらの一味』でなかった頃に、こいつらはルフィたちに会っている、ということ。4人の麦わら海賊団。「…」しかし、今はそんなことを考えている場合ではない、と思考を切り替える。幸いなことに、格子は細めの鉄で出来ており簡単に蹴り破れそうである。問題は手錠の方で、どうやら海楼石でできているようだった。こちらは、簡単にちぎれそうにない。だが、牢の外に出られれば鍵くらいすぐに見つかるだろう。取りあえずこの格子を蹴り破って外に出るのが先だ。そう考えて、激しい蹴りの一撃を放つべく、サンジが集中し始めたときだった。「黒足」呼んだのは、眼鏡の男。「止めておけ。蹴り破っても無駄だ」「…何故だ?」「もうすぐ『おれの仲間』がここへ来る手はずになっている。それを待ってから脱出しても、遅くはないと思うが」「……それで、おれも連れ出してくれると?」「『おれの仲間』は、『麦わらの一味』と浅からぬ縁があるからな」眼鏡の男はにやりと笑い、手首でつるを押し上げる独特な方法で、眼鏡の位置を直した。 PR