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マイナー作品とかのションボリ二次創作を細々と。

【銀魂】狗の憂鬱[3]

【銀魂】山崎シリアス(土山)

S方さんとM崎さん。

※シリアス&ダウナー系ご注意。
※大半が密偵山崎に夢を抱いた話となっています。
※暗殺、軽い暴力、あんぱん、暴力と関係ない嘔吐、あんぱん、あんぱんなどを含みあんぱん。
※全4話。やっと土方さん登場…、が、二人共駄目人間注意。

まとめ:
[1] http://sets.blog.shinobi.jp/Entry/173/
[2] http://sets.blog.shinobi.jp/Entry/174/




 ■ 狗の憂鬱[3]


「――副長」
 夜間、ひっそりとした屯所に戻って、俺はまっすぐ俺が報告をすべき人の部屋へ向かう。
「山崎です、開けますよ」
 返事を待たずに障子を開ける。途端、中に充満していた煙が溢れてきて、俺は咳き込んだ。
「………んだ、こんな真夜中に」
 真正面に、振り返りもしない副長の背中がある。何だか、ひどく安心した。
「…吸い過ぎじゃないですか、副長。体壊しますよ」
「殴る相手がいなくてストレス溜まってんだよ」
「それは大変ですね」
「誰のせいだ誰の」
「その人に仕事を押し付けた人の責任じゃないですか」
 チッと舌打ちをして、やっと副長は振り向いてくれた。疲れたようなボサボサの髪、リラックスするためにかいくつか釦の外されたシャツ。咥えていたタバコを無造作に口から抜き取って、既に灰でいっぱいになっている手元の灰皿に押し付けた。入れ、と言う言葉に従い、障子を元通りに閉める。
「――おい、山崎」
「はいよ」
「随分やつれてんな。またあんぱん生活か」
「気にせんでください。ちゃんと成果上げてんですから」
 副長こそ大丈夫ですか、と目元のクマを指摘すると、フン、という鼻息が返事として帰ってきた。
「そんなことより、何かつかめたのか」
 身を乗り出してくる副長に、はい、と頷いて、俺は仏像とその中にあった薬や数枚の写真、女の携帯のデータを移したSDカードなんかを取り出して彼の前に並べた。
 それら一つ一つを示しながら、時系列を追ってしっかりと説明する。ターゲットの特徴、周りの人間、夜訪ねてきた女、それを殺したこと、仏像とその中の薬のこと。
「毒か」
「毒です」
「何の?」
「俺にはわかりませんでした。鑑定回して下さい」
 袋の中をすんすんと嗅いでいる副長に、強いですから止めた方がいいですよ、と忠告する。既にその効果はこの身で体験済みだ。
「わかんねェのか。何だよ、使えねェな」
 副長が、薬の入っていた仏像を投げつけてくる。急だったのと毒がまだ効いていて動作が鈍くなっていたのとあって、俺はそれを真正面から頭に受けた。
「…阿呆か」
「すみません」
 報告は以上です、と頭を下げると、それ以上の言葉は帰って来なかった。
「…少し休んだら、また戻ります。まだ探れ―――」
 強い視線を感じ、語尾を消す。
「―――休むだァ?」
「…いえ、せっかく帰ってきたし、ここんとこあんぱん続きで体調が―――ッ!?」
 また最後まで喋れなかった。今度は自主的に言葉を消したわけではない。思い切り、横面を張られたからだ。畳に倒れこむ。
「何言ってんだ、あァ?テメェの勝手で仕事休もうたァいい度胸じゃねェか」
「っ、」
 左肩を蹴られ転がる。仰向けになった俺の、蹴り飛ばしたのと同じ所を副長は踏みつけた。ぐ、と体重をかけられると肩の骨が軋むのが分かった。張られた頬が熱かったが、押さえることもできない。
「偏った飯食って体調崩してンのもなかなか証拠掴めねェのも、全部テメェの責任じゃねェか」
 納得のできない理論だ。だがこの体勢で反論できるほどの勇気は俺にはないし、確かに俺が危険を恐れずに潜入捜査に切り替えていれば、もっと重要な情報がつかめたかもしれない。だから俺は頷いた。
「は…、い」
「それなのに休むだァ?おいテメェ、自分の体調は自分で管理しましょうなんて、ガキでも知ってんぞ」
 足を振り上げて、
「ぐッ」
 喉を踏みつけられる。息がつまり、思わずその足首を掴もうとしたら踏む足に力がこもった。まるで、このまま喉を潰してもいいのだとばかりの仕草に、反撃の力は失われる。
 息ができない。
「テメェがサボッてる間にホシが動いたらどうする。その間に死人が出たらどう責任取る」
 反撃をせずとも、喉を踏む足に力がこもった。俺を苦しめるくせに、その足はやけに温かい。
 息ができない理由は何だろう?見上げた副長の表情は逆光。だが彼がどんな顔をしているのかは容易に想像ができた。
「テメェの体調テメェで管理できねェなら俺が管理してやろうか?飯からシモまで全部世話してやんぞ」
 喉の上から足が離れた、と思ったらもう一度蹴り飛ばされる。また体は転がされて、背中が障子に当たった。
 転がったままげほげほと咳き込むが、胸元を強く掴まれ引き上げられた。また、気道が閉まる。苦しみに生理的な涙が頬を伝う。空気を求めて開いた口から唾液が溢れるのも分かったが、反撃を封じられている俺には、それらを拭うことすらできない。
「首輪繋いで飼ってやろうか、あァ?俺の命令だけ聞いて生きる畜生になるか?」
 酷く近くに副長の綺麗な顔がある。艶のある黒い髪と、同じ色の瞳。常に瞳孔の開いたそれは、今だけは俺を大きく写し込んでいて。心臓が高鳴る。目が離せなくなる。
 ここに首輪を、と喉をつうと冷たい指先が撫ぜる。そこから、不穏な疼きが生まれるのを感じた。
「お、俺…ッ、は」
 ほとんど膝立ちの状態で喉を締め上げられながら、俺は言葉を紡ぐ。
「俺は、もう……っ、く、――アンタの、狗ですよ」
「………はッ」
「アンタに全部世話してもらって生きるなんてこの上ない幸せです。でも狗は狗なりに、ご主人様の役に立ちたいもんで」
 どん、と突き飛ばされた。障子にぶち当たり、がたんと大きな音を立てた。こんな真夜中なのに迷惑なことだ、と関係なく思う。障子が外れなくて良かった、外れたら直すのが大変だから、とも。
 座布団から外れたところにどかりと腰を下ろす副長と対照的に、俺はのろのろと体を起こす。袖で、目元と口元を拭った。
「…確かに俺の体調管理は俺の責任です。それが出来なかった為に誰かに迷惑をかけるわけにゃいきません」
 正座し直して、頭を下げる。
 張られた頬と踏まれていた喉が熱い。だけれどその後に指で撫ぜられた跡が冷たくて、そのギャップのある疼きに頭が壊れそうだ。
「すみませんでした。すぐに戻ります」
 そのまま退室しようとすると、待て、と声がかけられた。
「…何でしょう」
「医務室には寄ってから行け。毒摂取したんだろ、変な後遺症が残っても困る」
「はいよ」
「それから、こっちへこい」
 意味はわからずとも、その言葉は命令の形式だ。
 辞去しようとしていた体を反転させ、副長の方へ向き直った。立ち上がり、数歩。座っている副長に目で示されて、彼の前に腰を下ろす。胡座をかいた副長と、正座の俺。
 ふいに、副長が俺に手を伸ばした。
「―――ッ!!」
 襟を引き下げられ、左の鎖骨に噛み付かれる。火傷しそうな熱さが触れた後、ぢゅ、という吸い上げる音が音のない夜に響いて、小さな鋭い痛みが首のあたりではじけた。
「あ…」
 ゆっくりと副長が離れる。吸われた場所が濡れて、彼の動きに起こされた微風すら肌が粟立つほどの感覚に変わる。
 痕、を。
「――行っていいぞ」
 もう用はないとばかりに俺に背を向け、副長は手を振る。獣でも追い払うかのようなその仕草に俺を頷き、それでは失礼しますと障子を閉めた。
「………」
 心臓の少し上、左の鎖骨を押さえる。
 しばらくぼうっとした後、医務室へ寄っていけという命令に従うため、俺は暗い廊下を歩き出した。
 張られた頬、踏まれ撫ぜられた喉、そして吸われた首に。与えられたのは激しい熱。
 この身がもし毒の為に朽ちるのならば、それはあんな少量の毒なんかではなく、あの人から与えられる甘美な激しさをもった名も無き劇薬のためなのだろうと俺は思う。
 それ以外のどんな毒だって、あの毒にはかなわない。
 そうでなければ、毒になんかなりやしない。



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土山系SM劇場~踏まれるならやっぱブーツより素足より靴下~
をお送りいたしました。微妙なエロチズム。所有者の証。

…急に長ェよ!
楽しかったんです書いてて。

土方さん9割がた出番終了のお知らせ。あと1話。

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