【Fate/Zero】エイプリルフール無罪! Fate/Zero 2014年04月01日 【Fate/Zero】言時(マーボーワイン)貴方に特別な感情など持っていません―貴方に特別な感情を持っています。※エイプリルフールネタを格納し忘れてたので格納する※冒頭に遠坂さんちの姉妹成分が少し含まれます。 言峰綺礼は、師である遠坂時臣を好いている。尊敬できる魔術師だから師として好意を持っているのか?違う。二児を持つ親としての父性を持っているから父親のような気分で慕っているのか?それも違う。――だったらどういう意味で?もしもその問を言峰綺礼本人に投げかけたとしたら、答えは簡潔に返ってくることだろう。あの碧い瞳に惚れたのだ。服のラインに隠れた、くびれた腰に惚れたのだ。日に焼けない白い項や、骨ばった男らしさを持ちながらもどこか細い手首に惚れたのだ。つまりその好意は、頭に『性的な意味で』と付く類のものであったのだ。■エイプリルフール無罪!その日、朝一で綺礼は凛と桜、二人の娘の襲撃にあった。凛曰く、実は自分は見た目よりも随分年上で実は男で、普段父と母と呼んでいる二人の人物は、実は自分の息子と娘なのだと。そしてその二人の子供の母親は、普段妹と呼んでいる人物なのだと。「なるほど、つまり凛と桜は夫婦だったのか」「そうよ!二人共若作りの魔術をかけているの!」起き抜けのぼんやりした頭にいきなりそんな衝撃の事実を聞かされた綺礼は、ベッドに上半身を起こしただけの状態で、今耳にした情報を整理して返した。この二人の娘の片方が実は男で夫。もう一人が妻。彼女たちの父と母が本当は子どもたち。なんともほほえましい話だ。魔術師の家であれば、あり得てしまう可能性もあるというのが、玉に瑕だが。凛はどこか得意げな調子で胸を張っており、桜はどこか困ったような顔でちらちらと綺礼を伺っている。なるほど、どうやらこの企みは、妹の意思を無視して姉が強引に進めたものなのだろう。そう綺礼は結論を得て、一人納得したように頷いた。「…なに頷いてるのよ、綺礼」「いや、色々と考えていたのだ」「いろいろって何よ?」「時に凛、つまりは、君が時臣師の父親ということなのだね?」「そ…そうよ。そう話したでしょ」「師は、自らの父が師だったと仰っていた。つまり、君が時臣師の師だと?」「そ………そうよ!だって私がお父さまの父親なんだから!」どうやら凛は、その設定を曲げないようだった。意地になっているのかもしれない。隣で不安そうに綺礼と凛の顔を見比べている桜の視線は、視界に入っていないようだった。「なるほど、そうだったのか。ならば今日から私も君に魔術を教わるべきなのだろうな」綺礼はベッドから立ち上がり、机の上に置いていた分厚い魔術書を凛に示してみせる。「この章なのだが」「…どこ?」引込みがつかなくなったのか、凛が魔術書を覗きこんでくる。綺礼は魔術書のページをめくりながら、口の中で小さく呪文を唱えた。「きゃあ!!」「ねえさん!?」ボン!と、凛が魔術書を受け取ったタイミングで、小さな爆発が起こった。驚いた凛は魔術書を投げ出して尻もちをつき、桜は慌ててそんな凛に駆け寄る。「だいじょうぶ、ねえさん?」「―――騙したわね、綺礼!!」暫く呆然としていた凛だが、やっと我に返ったのか、綺礼を大きな碧い目でキッと睨みつける。しかし、そんな凛々しい表情も、その顔を彩る色のせいで台無しだ。「騙す、とは?そもそも、今日はそういう日なのだろう?」「だからって、こんな驚かすようなのって酷いじゃない!」「怒るのもいいがね、凛。その前に、鏡を見ることをオススメするよ」「鏡…?」「…ねえさん」ぴた、と動きを止めた凛の袖を、桜がくいくいと引っ張る。何よ桜、と振り返った凛の目に、壁にかかった飾り気のない鏡が映った。そして、そこに映る自分の姿も。「…何よこれ!!」凛が悲鳴をあげたのも無理は無い。何故なら、その柔らかそうな頬や鼻は全て、黒い煤で汚れていたのだから。もちろん、その原因は先ほどの爆発にある。綺礼が唱えたのはそれを起動させるための呪文だった。元々誰が仕込んだのかはわからない、他人を脅かすだけの仕掛けだそうだ。その魔術書を綺礼に渡した時臣も、笑い事のように、変な魔術がかかっているから気をつけなさいと言っていた。だから、気をつけて、細心の注意を払って、今発動させてみたのである。嘘だってわかってたならもっと早く言いなさいよとか、こういう騙し打ちみたいな嘘は優雅じゃないわとかと騒ぎながら、凛が洗面所へとばたばたと走って行く。その姿こそが優雅ではないのではないのかねと背に投げかけるが、どうやら聞こえていないようだった。お騒がせしました、とぺこりと桜が頭を下げて続いて出ていき、そしてようやく静かな朝が戻ってくる。「ふう…」柄にもなく、ため息などついてしまう。全くもって騒がしい朝だった。(だが、そうか、今日は………)エイプリルフールなのだな、と、自らにはおおよそ関係のないイベントの名を、綺礼はぼんやりとつぶやいた。* * * * * 朝から娘たちにエイプリルフールの洗礼を受けた綺礼だから、今日の修行はなしにしよう、朝食のあと私の部屋に来なさいという師の言葉も、一瞬嘘かと疑ってしまった。少し考えればわかることだ。自分にも関係無いようなイベントが、この浮世離れした男に関係することなどあるのだろうか。なので指示された時間にその通り時臣の部屋を尋ねれば、ちゃんと師はそこで待っていて、うん、時間通りだねと微笑んだ。「そこに座りなさい。紅茶は飲むかね?」「それならば私が」「ああ、いい。もう淹れてしまったんだ」にこにこと笑いながら、華奢な細工のティーポットを掲げてみせる。あとは注ぐだけということなのだろう。そのポットとセットのカップに鮮やかな色の液体が注がれる。綺礼には種類まではわからなかったが、甘いような果実の香りがした。「レモンティーだよ。君の口に合うか分からないが」「ありがとうございます」一口含んでみれば、おおよそ時臣にも似合うとは思えない可愛らしい味だった。恐らくは、彼の妻の好みなのだろう。レモンというが酸っぱさはほとんどなく、甘さしか感じない。時臣も綺礼の向かい側に腰掛け、自分の分のカップを手にしていた。「綺礼、クッキーもあるよ。好きに食べなさい」「…ありがとうございます」「こっちはバニラ、こっちはチョコレートだ。ジャムもあるが、要るかね?」「……いえ、結構です」断るも、一口齧ってみたクッキーは綺礼の口には妙にぱさぱさして思え、結局は手を伸ばしてジャムを掬った。潰した果肉入りのストロベリージャムをたっぷりかければ、その口当たりは随分ましになった。それ見たことか、やっぱりジャムを使うんじゃないか、と勝ち誇るような機嫌の良さで、時臣もクッキーを手に取る。彼は、弟子とともにティータイムを取りたかっただけなのだろうか。美味しそうに紅茶のカップを傾け、クッキーを口に運ぶ時臣の姿は様になっている。彼に対し『性的な意味で』好意を持っている綺礼からすれば、クッキーを咀嚼するために小さく開く口だとかカップに残った最後の一滴を呷るために反らされる喉だとかは、酷くそそるものがあった。「…なんだい、綺礼?」「…いえ、何でもありません」「そうかね」しかし。師弟二人きりのティータイムとは、魔術の修行を取りやめてまですることだろうか。妻や娘を加えてのお茶会ならば毎日時間を取るのだから、多分二人きりというところに意味があるのだろう。が、二人だからといって特別な何かをしようというわけでもなさそうだ。一体この時間は、何のために設けられているのだろうか。(…聞いたほうが、早いか)悩んだところで解決しない問題だろう。決断した綺礼は、手にしていた。ティーカップをローテーブルの上に戻した。「師よ」「なんだい?」「この時間には、何の意味があるのでしょうか?」はぐらかされるか、特に意味はないというような返事が来ることを、綺礼は想定していた。だが返ってきたのは時臣の、赤面して視線をそらす、という仕草だった。少しだけ沈黙した後、時臣が小さな声でつぶやく。「……き、君と二人きりでだなんて話したくなかったのだが…」綺礼から逸らされた視線は絨毯の上をうろうろと彷徨って、言葉は歯切れが悪い。ためらいがちなその姿は、いつも自分の信じる道を自信を持って進んでいく彼らしくなく思えた。それに加えて、綺礼を否定するような言葉。既に、嫌な予感しかしなかった。言葉尻を濁した時臣は、しかしやっと決断したかのように、上目遣いで綺礼をまっすぐに見る。「綺礼。……君は私に、何か、特別な感情を抱いているのではないかね?」内心、どきりとする。特別な感情。それは、もちろん綺礼が持て余しているその感情、それのことを言っているのだろう。『性的な意味』を含む好意。口に出したことなど、もちろんないはずだ。それを、何故彼が。―――いや、まだ、「それ」がバレたとは決まっていない。内心の動揺を押し隠し、綺礼は出来る限り無表情を貫いて小首を傾げてみせた。「……なぜ、そう思われるのです」「なんて言えばいいのだろうね、君の視線が、時折とても粘っこく感じる時があるんだ。服を着ていても、その下を見られているような…」ジーザス!綺礼は心の中で叫んだ。もちろん顔は無表情を貫いたが。だがこれは完全にバレている!そんな妄想など、何度したかわからない。あのきっちりとした赤いスーツ、白いシャツ、その下の均整のとれた肢体を、どれだけ妄想しただろう。あのリボンタイを解く妄想を、何度しただろう。気付かれていないと思っていた。流石に正面からじろじろと見るわけにはいかないから、いつだって背中や頭上や、とにかく彼からは見えない場所にいるときにしか、そういう視線を向けていないつもりだったのだが。どうやら隠しきれてはいなかったらしい。「…私の気のせいならば、謝ろう。そんな疑いを持たれるなんて、君の矜恃にも関わるだろうからね」この問に対し、綺礼のとれる対応は、恐らくは二つだろう。一つは、それは真実だと認めること。確かに綺礼は時臣に対し、彼が感じる通りの視線を向けていたのだから、認めてしまうことが一番楽ではある。だが、認めたからといってどうなるだろうか。最初に時臣だって言っていた。二人きりでなど話したくなかったと。そう言い置いてから話し始めたのだから、もしもここで綺礼が時臣への好意を認めたところで、それ以上の進展などあるはずがない。悪ければ、弟子を破門されたり、記憶を消されてしまったりする可能性もある。だとすれば、綺礼が取るべき行動は、もう一つのものに制限される。「……そうですね。そんな視線を、向けた記憶はありませんが」つまり、嘘をつくことだ。今後、聖杯戦争とやらが始まるまでにはまだ時間がある。こんなに早いうちから、師とギクシャクするわけにはいかないのだ。父にも怒られるだろうし。この場さえごまかしてしまえば、どうとでもなるだろう。「もしも何か不信に感じたというのでしたら、私は元代行者ですので、自覚していない内に魔術師であるあなたの実力でも測ろうとしてしまっていたのかもしれませんね」「そうか…!」時臣は、ほっとしたような顔を浮かべる。よかった、この対応で合っていたようだ。しかし、綺礼の心中は複雑である。嘘に対して、これだけ喜ばれたのだ。これが嘘で本心はその真逆なのだと知れたら、どれだけの逆襲があるだろう。今後も、この想いは隠し通すしか無いのだ。もとより、わかっていたことだろう。そんな綺礼の心など知るはずもなく、時臣はにこにこと言葉を続ける。「それならば、この間眠っている私の唇に触れていたことにも、何か意味があるのだね?」―――まさか、それもバレていたとは。「丁度、使い魔を巡回させていてね。後から記録した映像を見て驚いたよ」「…そうですか」数週間前のことだったと思うが、その時綺礼は時臣の妻に頼まれて、時臣の元へ紅茶を運ぼうとしていたのだ。しかし、部屋の扉をノックしても返事はなく。不審に思って覗いてみれば、椅子に腰掛けたまま彼はうたた寝をしていたのだ。珍しいこともあるものだと、顔を覗きこんでしまった。近視か何かなのか、細いフレームの眼鏡をしていた。碧い瞳は閉じられ、薄く開いた唇からは規則正しい寝息。柔らかそうで少し濡れていて、思わず触れてしまったのは、出来心と言う他ないだろう。まさか、そこに彼の使い魔がいて逐一を映像として保管していたとは、想像もしていなかった。「…………昔討伐した魔術師に、唇の裏側に呪文を仕込んでいる者がいたので、あなたもそういったものを隠し持っている可能性もあるかと」「そうか」時臣は素直に頷いたので、内心ほっと胸を撫で下ろす。随分無理矢理な論法ではあったが、確かに昔そういう相手と戦ったことがあることも事実だった。詳しく話せといえば、語れる自信もあったのだが。深く突っ込まないというのであれば、それはそれで問題はない。「そうか、やはり君は私に特別な感情など持ってはいなかったのだね」にこにこと、時臣は機嫌がいい。「そんな感情など、向けられても困るものな。とても、嫌だ」「嫌ですか」「ああ。そんな感情を向けられるなんて、とても、気分が悪い」綺礼の雰囲気が変わったことに、時臣は気付かなかった。テーブルの上に置いたままだったティーカップを取り上げ、口元に運ぶ。「何故なら、私だって君に、―――興味などないのだから」その言葉と、綺礼が立ち上がるのはほぼ同時だった。「……綺礼?」「…………私には興味が無い、ですか」見下ろした時臣の顔に、自身の体が作る影が落ちる。きょとんとした顔には、自分はどのように見えているのだろうか。その言葉は、どう聞こえたのだろうか。だがそこまで言われて黙っていることは、綺礼にはどうしてもできなかった。「嘘です」「……何が?」「全てが」「…………全、て?」時臣の手首を掴んだ。ティーカップが床に落ち、柔らかい絨毯にくぐもった音を立てて受け止められる。少しだけ残っていた紅茶も、その絨毯に吸い取られることだろう。手首を掴まれた時臣は目を見開いたまま、掴まれた手首を振り払うことも忘れている。そんな呆然と見開かれた碧い目を見れば、今朝の凛の姿が思い出された。綺礼に騙されて、床に座り込んで見開かれた碧い瞳。親子だからか、それは全く同じ表情に思えた。思わず笑みが漏れる。「きれい…?」「ええ、そうでしたね。今日は、エイプリルフールでした」そうだ、今日はエイプリルフール。嘘をついても良い日。だから、嘘をついたのだ。騙される方が、悪い。興味などないと言い捨てた相手に本当は想われていると知るのは、どんな気分だろう。ましてや人のいい時臣のことだ。自らが傷つけてしまった相手がいると知ったら、どんな償いをする気なのだろうか。ぐ、と強く掴んだ手首を引き、鼻がぶつかりそうなほど顔を寄せる。「ですから、嘘です。あなたの唇に触れた理由も、あなたを見ていた理由も、あなたに特別な感情など抱いていないということも」「……ああ、わかっているが?」「嘘ですよ。あなたの唇に触れた理由も、あなたを見ていた理由も、あなたに特別な感情を抱いているからです」「わかっているが」「ですので、嫌だと、気分が悪いなどと言われるのは……………………ん?」「だから、今日はエイプリルフールだろう?」掴んでいた手首を離せば、時臣は赤く指の跡がついてしまったそこを嫌そうに眺め、そして綺礼へと視線を戻した。「今、君も私も嘘しかついていないだろう?」「………………え?」「おや?もしかして君、わかっていなかったのかい?」「………………え?」「何だ。ジャムを要らないと言いながら使っているから、てっきりわかっているものだとばかり思っていたのだが」わかっていなかった??混乱する頭を、綺礼は必死にフル回転させる。今日はエイプリルフール。今、綺礼も時臣も嘘しかついていなかった。ジャムを要らないと否定する言葉を吐きながら、そのジャムを使うという行動。娘たちが既にエイプリルフールを実行している家。つまりは。「……『君と二人で話したくない』というのは?」「二人っきりで話をしてみたかったんだ。修行以外の場所でね」「そんな感情を向けられても困る、というのは?」「人に好いてもらえるなんて、嬉しいじゃないか」「…………私に興味が無いというのは?」「……それは、逆だからこそ言える言葉だと思うのだがね」ばつの悪そうな笑顔を浮かべ、時臣は答えた。二人きりになってみたかったと。好意を向けられることが嬉しいと。綺礼に、興味を持っているのだと。「……なあ、綺礼」つまり、嘘だ。全て嘘だった。そして綺礼は自らでも気付かない内に、彼へと想いを告白してしまっていたのだ。そんな視線など向けていないというのは、ずっと貴方をそういう目で見ていたのだ、と。「さっき君が立ち上がってからの言葉は…全て、エイプリルフールとは無関係の、嘘ではない言葉ということで、いいんだろうな?」「…ええ、そうです」「だったら、それまでの言葉が全て嘘だったというのも、真実だね?」「はい、そうです」「つまり、やっぱり君は私に特別な感情を持っていると?」頷くと、じゃあ私達はやはり、互いに同じ想いを持っているのだね、と時臣は笑った。だが僥倖だ。絶対に伝えることはないだろうと思っていたこの想いは伝わり、綺礼の欲求が満たされる機会が与えられたわけである。まだ未来は長く、綺礼も時臣もどのような道を歩むのかはわからない。だが、いつか離れる日が来ても、今同じ想いを共有できるのならば。微笑む時臣に、綺礼もぎこちない笑みを返した。「とりあえず、両想いだとわかった証に、くちづけをしても?」「絶対に嫌だ!」初な子供でもない癖に、初めて交わしたくちづけは、甘い味がするような気がした。(それはレモンティーの味じゃないかな綺礼!)本当はね…もっとアゾット剣とか関わってくる感じのマボワが好きなんだ…時臣師が死んでるマボワとか大好物なんだ…だけど私が書けるのはラブコメだけなんだ…くそう私は末永くイチャイチャし続ける師弟しか書けないのでもっと冷徹で格好いい時臣さんとか愉悦を知らない求道者だったり愉悦を知った破綻者だったりする綺礼は外に求めることにするよ…マボワください書きたかったもの・凛vs綺礼→勝者:綺礼・うっかり野郎のお茶目にうっかり騙される綺礼ちゃん 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