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マイナー作品とかのションボリ二次創作を細々と。

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子守唄の要らない夜

その左手の温かさだけが全てだった。
幻水1 坊ちゃんとグレミオ。



x x x

辺り全てが真っ暗だった。驚いて自分の手を見下ろすが、それすら見えないほどの黒。
誰かいないかと呼ぼうとするが、声が出ない。それどころか、開けた口から進入してくる黒。
逃げようとした。しかし足は動こうとしない。
ただ、恐ろしかった。
しかし。
(大丈夫ですよ、私が守りますから)
耳に届いた声。視線を上げれば、あれほど真っ暗だった世界の中にぽつりと浮かんだ姿。
金の髪と緑のマントを揺らして微笑む顔。
その名を呼ぼうとした。しかし声は出ない。
自分の体が、段々と光に包まれるのを感じた。暖かい光。
それと同じように、闇に包まれていく彼の体。
手を伸ばす。届かない。その名を呼ぼうとする。声は出ない。
伸ばす手にも、開けた口にも光がまとわりついて、無理やりに闇から引き出そうとする。
足が、腕が、体が、光に飲み込まれる。
彼の足が、腕が、体が、闇に包まれる。
それなのに、微笑む顔。
(大丈夫ですよ、絶対に私があなたを守りますから)
ちっとも大丈夫なんかじゃないのに、そう言い残して、彼の姿が完全に闇に飲み込まれた。
(大丈夫ですよ、坊ちゃん。あなたの幸せが、この私の幸せなのですから)

そして僕は目を覚ます。



…ちゃん、大丈夫ですか、坊ちゃん!
目を開けると、自分の顔を覗き込んでいる誰かがいることに気付いた。
「うなされていましたよ。大丈夫ですか?」
金色の髪、頬に十字の傷。それを見止めた僕は、思わずその頭を抱き寄せた。
「わわ、坊ちゃん!?」
グレミオは驚いたように声を上げたが、僕が泣いていることに気付いて口を閉じた。
「…大丈夫ですか、坊ちゃん」
「大丈夫じゃない」
「怖い夢でも見ましたか?」
「怖い夢を見たよ。お前がいなくなる夢だ」
「私が?」
「そう」
僕を光へ導く代わりに自らを闇に沈めた。随分暗示的な夢じゃないか。
でも、グレミオはそれくらいやりかねない。僕が生き残る為に死んでくれと言えば喜んで死んでくれるだろう。
それが僕にはたまらなく嬉しくて、同じくらい悲しかった。
「…大丈夫ですよ、坊ちゃん。私があなたの傍を離れることなどあると思いますか?」
ない、と断言できる。でも、前述の通りだ。
グレミオが、僕の命か自分の命かを天秤にかけたとしたら、かけるまでもなく選ぶ側は決まっているのだ。
「…絶対に、僕の傍から離れるなよ」
「わかっていますよ、坊ちゃん」
だから、今日はもう寝ましょう。そう言われて初めて、まだ夜は明けていないことを知った。
窓から見える空は暗く、小さな星の瞬きと細い弧を描く月が全ての光だった。
「明日は大変ですよ。何たって、監獄に忍び込まなければいけないんですからね」
そう言ってグレミオは微笑んだ。
「このグレミオが傍にいますからね。ずっと手を握っていますよ」
僕の左手を包み込む暖かさ。
「…うん」
「さ、目を閉じて。子守唄は要りますか?」
「あんまり子ども扱いしないでくれよ」
僕はとうとうふきだした。グレミオのクスクス笑う声も聞こえた。
僕は目を閉じる。左手を包む暖かさだけが全てだった。
その夜はもう、怖い夢など見なかった。

いつか、ふと目を覚ましたら、こんな戦争なんて夢で、いつものように父やテッドが隣にいて、
皆でグレミオのシチューを食べているなんて、そんな現実があればいいのに、と夢を見る。
テッドが離れていった。父と道をたがえた。
戦争など嫌いだ。
もう、何も失わなければいいと思う。


しかし次の日、この左手の温かさすら失うことになろうとは。



x x x

父さんが悪いんだ。いきなり1なんて始めるから。
もう、何もかも懐かしいです。
坊ちゃんとグレミオは、紋章に解放されるまで、永遠に二人で旅を続ければいいんだと思います。

ちなみに黒兎は、
「グレミオは体をなくしたけれど、門の紋章の力で生き返ったので、普通の人間とは時の流れが違うんだよ」派です。
つまり、坊ちゃんとずっと一緒に旅していてください派です。

紋章の保持者は本当に悲しい。
2主はナナミを失うし、クリスなんかも、ボルスやパーシィちゃんなんか全員失うんだぜ。
そう考えると、もしかしたらルックは幸せになれたのかな…
ずるいぞ。

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