夢 FF6 2008年03月15日 夜に繋がる世界。双子。 x x xいくら地上の距離が遠く遠く離れようとも、お前の存在をふいに近くに感じるような気がして。「久しぶりに夢を見たんだ」と、エドガーは言った。読んでいる本からは顔を上げず、まるで独り言のようだったが、神官長は耳を澄ます。「昔の夢だよ。この城に、王子が二人いたころの話さ」「おやまあ、それはまた懐かしい話を」神官長は、ベッドを直しながら王の方を振り向いた。「もう何年になりましたっけねぇ?あの方がこの城から出て行かれてから」「10年だよ。…そう、そんなにも経ったのだねえ」窓枠に肘をつき、読みかけの本から顔を上げる。窓の外にはそっけない砂の海が広がっているだけだが、太陽は酷く明るい。この、石造りの冷たい部屋の中とはずいぶん違うな、とエドガーは思った。思っただけで、口には出さなかったが。「久しぶりに夢を見たんだ」と、マッシュは言った。口に運ぶフォークの手は止めず、師匠の方へちらりと視線を送る。「小さい時の夢さ。まだ、俺が別の暮らしをしていた頃の」「かなり昔の話だな」バルガスはマッシュの方を見ずに相槌を打った。ダンカンが問い返す。「何年前だったか?お前が、俺の元に転がり込んできたのは」「10年前。よく覚えているよ。…もう、そんなに経ったんだな」食事の手を止め、小屋の窓から外を眺める。遠く連なる山々、小さい頃に慣れ親しんだ砂の海は、まったく見えない。あの、父親がいた部屋は今どうなっているのだろうとマッシュは考えた。考えただけで、答えは思い浮かばなかったが。「会いたいですか、マシアス様に?」神官長の問いに、エドガーは微笑んで首を振った。「いいや」「何故です?」夢に出るほど会いたいのでしょうと問われ、エドガーは笑みを苦笑に変えた。「あいつがせっかく掴んだ自由を、誰が奪うことができる?」彼は、自分の弟で一国の王子である前に、一人の人間なのだ。「エドガー様…」「会えるものなら会いたいが」もう一度、窓の外を見た。変わらない砂の海。「…夜になれば、また夢を見るさ」「会いたいか、家族のものに?」ダンカンの問いに、マッシュは微笑んで首を振った。「いや、大丈夫だよ」「何でだい?」夢に出るほど会いたいんだろとバルガスに言われ、マッシュは困ったように頭をかいた。「だってさ、せっかく…兄貴は、あのコインを投げてくれたんだ」世界一大事な人が自分の犠牲になってくれた。それは、本当に幸せなことだから。「マッシュ…」「会えるなら会いたいけど」ふ、とまた窓の外の青空を見上げる。「…夜になれば、また夢を見るよ」そしてまた繰り返し夢を見る。子供のころの、自分がいて、彼がいて、父親がいたころの幸せな夢を。それだけで、今は十分だった。与えた愛を、与えられた愛を知っているからこそ。元々ひとつだった魂は、永遠に別たれることはないのだから。x x x互いに互いが一番大事。マッシュは自分がどこから来たのか、二人に話してないけど、ダンカンはマッシュが王子だと微妙に気付いている感じで。 PR