忍者ブログ
マイナー作品とかのションボリ二次創作を細々と。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

そこに俺の居場所がないことを知っている

過去を見ながら未来も見つめるアンタが綺麗で。 ハナコ←シーカー

※キャラ設定はこちらをご覧ください。



x x x

「私、彼氏がいたのよ。ラブラブだった」
二人だけで飲んで、酔うと、姐さんはいつもその話をする。
俺は黙って、グラスを持ち上げた。
「ちょっとぉ、聞いてるのぉ!?」
「うん、聞いてるよ」
口を挟めば怒るくせに、相槌は求めるのだ。
そんなところが姐さんらしくて、俺はちょっと笑った。
怒られるかと思ってすぐ表情を引き締めたけど、どうやら姐さんは気付いてないみたいだった。
赤いワインをグラスの中でぐるぐる回しながら、ぽつりと話し始める。
「一緒に買い物行ったりね、とっても幸せだった」
「うん」
「彼ったら、私に服買ってくれたのよ。お金ないくせに」
「うん」
「荷物まで持ってくれてさ。信じられる?メディックのくせに」
「力持ちだったの?」
「まさかぁ!私のが力はあったと思うわ」
「そっか」
姐さんはふふ、と笑う。
その顔がすごく幸せそうで、つられて俺もちょっと幸せになった。
「そう、すごく優しい人だったのよ」
「うん」
「…すごく優しい人だったの」
「うん」
「彼、メディックでね、すごく腕が良かったのよ」
「うん」
「でもね、病気で死んじゃった」
仄かな明かりを反射して、視界の隅できらりと光ったものの正体を、あえて俺は確かめはしない。
姐さんの表情はさっきとかわらなくて、少し辛くなって俺はグラスを持ち上げて何でもない風を装った。
「生まれた時から持ってた病気だったんだって。死ぬの、わかってたんだって」
「そっか」
「好きですって最初に言った時に、病気のこと話してくれてね、すごくショックだった」
「そうだろうなぁ」
「何よ、気持ちこもってないわよ」
少し睨まれて、俺は慌てて言葉を紡ぐ。
「そんなことないよ。俺だって好きな…いや、もし姐さんが、いつか死ぬ病気を持ってたりしたら、すごくショックだ」
声にしながら、そんな状況を想像してしまい、予想以上に悲しくなる。
そんな感情が声に出たのだろうか。
「そう?ならいいんだけど」
そう言って、姐さんはすぐに引き下がってくれた。
「…でもね」
そして、また話し始める。
「その時は、奇跡を信じてた」
「…」
「二人がいい子にしてれば、きっと奇跡が起こるって」
「…」
言葉が途切れた。
その先は聞きたくない。もう、何度も聞いた話だから。
「…でもね、起きなかったのよね」
姐さんの表情は変わらない。
彼女が、表情を作ることがとても得意だと気付いたのは、2度目にこの話を聞いた時だ。
「ねぇ、何がいけなかったのかしら?教えてよ」
青い瞳が俺を映した。
その瞳に吸い込まれそうになって、俺は顔を背けた。
「って言われても、俺知らないよ」
「あなたに聞いた私が馬鹿だったわ」
姐さんがクスリと笑う。
そんな笑いでも、表情を変えてくれたことに、俺はちょっと安堵した。
「…なあ、姐さん」
「何?」
「そいつのこと、忘れられないの?」
「当たり前じゃない」
姐さんは、自慢げな顔で笑った。
「俺じゃ代わりにならない?」
「当たり前じゃない!」
おどけて言った言葉は、やはり彼女の中で冗談に分類されてしまったようだ。
俺はことさらいじけた調子を作って、グラスの中に残っていた液体を喉に流し込んだ。
「はい、ご馳走様ー」
「えー、帰るのー?」
「姐さんもだよ。もう何時だと思ってるの」
そんなことを言いながら、金を取り出す。
「あら、あんたが払ってくれるの?」
「どーせ、最初からそのつもりだったろ」
「あら、良く分かったわね!シーカー大好きvv」
両手を胸の前で合わせた姐さんに、俺はため息を一つついて、何枚かの札をカウンターの上に置いた。

そんな「好き」でも幸せになれる自分が、ちょっと嫌で、
でもやっぱり幸せだった。



x x x

ダクハン♀はS、ダクハン♂はMのイメージががががが(何
苦労をかけるおねぃさんと苦労人、というコンビが大好きです。

拍手

PR