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マイナー作品とかのションボリ二次創作を細々と。

三月の雪

それは、とてもめずらしいこと。ティアクライス・司書コンビ。


x x x x x


桜芽吹き風もどこか温かさを感じさせるようになってきた三月。
穏やかな毎日の中でふいに、それは起きた。




三月の雪




「ファーガス!ファーガス!!」

騒がしい声とともに、大きな音を立てて扉が開かれる。
蝶番も取れよとばかりのその勢いに、ファーガスはかすかに眉をひそめた。
読んでいた本にしおりを挟み、突然の闖入者をじろりと眺める。

「騒々しいですね。何ですか、コノン」
「外見てみなよ、すごいよ!」

そう言いながらコノンは部屋の中へ駆け行ってきて、勝手に窓を開く。
びゅうと風が吹き込み、ファーガスは慌てて手元にあったひざ掛けを引き寄せた。

「寒いですよ」
「寒いはずだよ。外、すごいんだよ」

きらきらした声と笑顔に、ため息をつく。
どうあっても、彼は自分の読書の邪魔をしたいらしい。
仕方なくひざ掛けを肩掛けに変えて、その隣に並び、コノンの指差すとおり外を見た。
白。
ファーガスが見たのはそれだけだった。
天空から、まるで花びらか鳥の羽毛のようにふわふわ、ひらひらと。
コノンがそっと手を差し出した。
その手のひらに落ちたモノが、手のひらの熱に溶けて水になるのを嬉しそうに見つめる。

「この時期に、このサイナスに雪ですか…」

ファーガスの知る限り、それは初めてのように思えた。
チオルイ山からも遠いこの町では、たとえ冬でも、雪自体が珍しい。

「凄いね。見る限り、全部真っ白だよ。キレイだねえ」

眼下に広がるサイナスの町にも雪は降り積もり、その屋根や道を白く染めている。
大人の人影が忙しげにその雪を道から退ける作業に没頭し、子供の人影が楽しそうに走り回る。
いつもは一つの道の成就の下に静かに集っている人々も、今日ばかりは例外らしい。

「ボク、こんなに雪見たの初めてだよ」
「雪が見たいならチオルイ山にでも行けば良いでしょう」
「そんな当たり前なの見たって意味ないでしょ」

コノンが馬鹿にした口調で言う。
少々怒りの感情が浮かぶような言い方ではあるが、確かに、とファーガスは思う。

「…この町で降るから、ボクは、この雪がキレイだって思うんだ」

貴方にも物を美しいと思う感情があるのですか、と嫌味を口にしかけて、やめた。
灰色の空を、雪の落ちてくる天空を見つめる瞳が、いつもと違ったから。
力のせいで狂気を宿してしまったその瞳が今、儚く美しいものを映していた。

「ねえ、外行こう、外!」

その瞳が急に振り向いたので、ファーガスはあせる。
わざとらしく殊更に大きくため息をつき、その瞳をじろりと睨み返して答えた。

「…一人で行きなさい」
「イヤだよ、一人で行ったってつまんないもん」
「それなら、ディアドラかビアズレイでも誘ったらどうですか」
「ディアドラは出かけてるっぽいし、ビアズレイはボク嫌いだし」
「ソフィアとノーヴァは?」
「その二人と遊んだってつまんないでしょーが」
「私と遊んでも面白くなんかないでしょうに」
「そんなことないよ。ボク、ファーガスといるの好きだし」

一瞬言葉を失う。いつもの彼らしくない、と思った。
コノンは、たとえ人に好意を持っていたとしても常にその反対の態度を取る。
ひねくれた性格なのだ。
このひらひらと舞う美しい雪が、彼の心に何か変化をもたらしたのだろうか。
それが良いことなのか悪いことなのか、ファーガスにはわからなかった。

「…何といっても、私は行きませんからね」
「えー?」
「一人で行けば良いでしょう」
「何でだよお、…あ、そっか、年寄りだから寒いのが苦手って?」
「コノン!」

彼はいたずらっ子の表情で、ファーガスが振り上げた手から逃れた。

「じゃあ先に行くよ!年寄りは年寄りらしく、えっちらおっちら後から来なよ!」
「コノン!…」

大きく手を振って、コノンはファーガスの視界から駆け去っていった。
登場も唐突なら、退場も唐突で。

「…行かないって、言っているでしょうに」

ファーガスはため息をつき、コノンが開け放して行ってしまった窓に手をかける。
ひらひらと、舞う雪。
それらにちらりとしせんをやってから、彼はその窓を音を立てないように閉めた。
窓ガラスを隔てて、音も立てずに降ってゆく雪。
ファーガスはまた椅子に戻って、ひざ掛けをひざにかけて、先ほど読みかけていた本を手に取る。
戻ってきた平和な時間に、ほっと安堵の息をつく。

「…」

ふいに、静かだと思った。
本のページをめくっても、その内容がうまく頭に入ってこない。
文字を追うだけの目、その他の器官が、何かを探している気がする。
静かだった。
雪が音を消してしまうからか、暖炉に今は火が入っていないからか。
それとも…

「…まったく、あの馬鹿は」

開いた本の同じページに、もう一度同じようにしおりを挟む。
立ち上がって、椅子の上にその本を戻した。

「いてもいなくても迷惑をかけるとは、あれは本当に嫌な奴ですね」

いらいらした口調で呟きながら、コートに手を通す。
ついでにもう一着、自分の寄りも長く細身のものを手にして。
もう一度窓の外を見る。
先ほどと変わらずひらひらと舞う雪たち。
珍しい季節に珍しい場所に降る雪。
こんなにも変わったことだらけだから、自分もこんな行動を取ってしまうに違いない。

―ほらね、やっぱりボクの言うとおりだったでしょ。
そう言って得意そうに笑うコノンが、目に浮かんだ気がした。





+++++

な ん だ こ れ

珍しくもこないだ三月終わりに雪が降ったので、
何かのネタにしたいなーと思ってたらまさかの司書コンビ。
ティアクラ処女作が司書コンビ。なんてこった。
あ、あれー!?ジャナム主従カルテット書こうとしてたのに!
くそ…好きだぜコノンorz

ファーガスさんは"自分より若いコノンと一緒に扱われるのが嫌"であって
コノンたん自体のことは嫌いじゃないと良いなあという無駄な協会ほのぼの妄想。
コノンたんは人の好き嫌いが激しそうだから、
常に一緒にいるファーガスさんのことは気に入ってるんじゃないかなという
無駄な協会ほのぼの妄想。

それにしてもコノンたんの喋り方がわからない罠。
途中から楚良みょん入ってる気がする。

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