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マイナー作品とかのションボリ二次創作を細々と。

双子と言ってもそうは似ていないから。[後編:エドガー編]

戯れか本気か、それが問題だ。 セツエド

前半は[こちら]



x x x

コンコン、というノックの音に、驚いて体が固まる。
「…人の弟に、何やってんだ?」
「えーっと、これには訳があってだな…」
静かな声音に、押さえ切れない怒りが込められていた。
「しかも、かなり荒らした後がある。これはきっと帝国の手の者の仕業に違いないな」
「その、えー…。あのだな、」
「人の弟を辱めただけでなく、王の部屋を漁り大切な書類を傷つけたその理由とは?」
言わずもがな、声の主はエドガーだ。
既に部屋の中にいるようだ、バタンと扉の閉められる音がした。
いつからいたのか、いや、いつから見られていたのか。
セッツァーが、エドガーが彼自身よりも大切にしている弟に、何をしているときから…。
靴音がコツコツと、だんだん近づいてくる。
それはセッツァーのすぐ後ろでぴたりと止まった。首筋に何かが押し当てられる。
「け、剣は反則だと思うぞ俺は」
「…答えろよ、空賊」
「誰が賊だよ、誰が」
「今お前が作り上げた、この部屋の惨状を見ても同じ口が叩けるか?」
折り曲げられ飛び散った書類、ばら撒かれた本や小物、落書きされた彼の弟。
セッツァーはすばやく頭をめぐらせる。冗談で済ませられる言い訳を探すのだ。
それ以外に、彼が生き残るすべはない。
「んー…えーっと、そうだ、そうだな。お前を誘き出すための罠と人質だぜ、これは」
「弟に落書きされたくなけりゃ、ってか?」
「そうだとも。俺の言うことを聞けー!ってな」
「…何をすればいい?」
「お?」
やけに素直なエドガーの様子に、セッツァーは驚く。
すっと剣が引かれ、首の後ろのプレッシャーもなくなった。
「何だよ、そんな素直にしてると逆に怖ェよ」
「マッシュを傷つけられるくらいなら…俺が…」
その声に、何か悲壮な決意のようなものがにじんでいる。
そういえば、弟に自由を譲るために、兄が国に拘束されることを選んだと言う話を聞いた気がする。
犠牲とか、人質とか、弟の関わるそういう言葉に、エドガーは無条件に従ってしまうのかもしれない。
「そうかそうか。だったら…」
気を良くしたセッツァーは体を反転させ、目の前にいるエドガーを見て、
「…ッ!?」
「かかったな!」
突然の激しい閃光。
「サ、サンビームか…っ!?」
目を開けていられずよろめいたセッツァーに、正面からエドガーが飛び掛る。
「この野郎!卑怯だぞ!」
「嘘でも人質とかほざく奴に、卑怯者扱いはされたくない!」
しばらく静かに乱闘は続いたが、閃光に目をやられ、のしかかられた体勢のセッツァーに勝ち目はなかった。
しかし。
「くぅ…っ」
「くそ…負けねえぞ…!」
その代わり、負けもしない。
両者の力は拮抗し、互いの腕を掴みあった状態で固まってしまった。
体重と力はエドガーの方があるのだが、セッツァーは足も使って、その体を押し返そうとする。
「畜生…!重てェよ砂漠王!」
「あ、謝って、フィガロの為に働くなら許してやる…!」
「お前の方こそ…、弟に手出しされたくなきゃ言うこと聞きやがれっ…!」
「て、手出しって!そういう誤解を招く言い方はやめろ!!」
「ほほう?どんな誤解をしたんだ?」
その言葉に、一瞬エドガーの力が緩む。
そこを見逃すセッツァーではない。腕に力を込め、体を反転させる。
「うわっ!?」
見事に体勢は入れ替わり、今度はセッツァーがエドガーにのしかかる。
「諦めて俺の言うことを聞きやがれ!」
「嫌だって言ってるだろ!!」
また両者の力が拮抗する。
ただし体勢を崩されたエドガーは足が使えず、腕だけで押し返さなければいけない。
このままでは力を消耗しあうばかりで決着はつかないと判断し、口論で気をそらす作戦に出る。
「どう見ても、お前が悪いだろ!書類ぐちゃぐちゃにしやがって!」
「お前が弟に任せて出てくからいけねえんだろ!」
「あの書類元に戻すの手伝えよ!フィガロの為に働け!」
そこでふと、セッツァーの力が緩んだ。
反撃しようとして、しかし訝しんで、エドガーも力を緩めたその時。
「…フィガロのためじゃなくて、お前のためになら、動いてやってもいいぜ?」
「え?…うわっ!?」
掴まれた腕が離され、セッツァーの両腕がエドガーの頭の横に立てられる。
顔が近い。落ちるセッツァーの銀の髪が、エドガーの金の髪に混ざる。
「セ、セッツァー…、近いよ…」
「俺は本気だぜ…?」
エドガーが真っ赤になってそらした視線を追い、セッツァーは顔を近づける。
「フィガロの為なんてデカい物じゃなく、お前一人の為になら……うごッ!!??」
瞬間、蒼白になってその動きを止める。
さきほど赤面していたのもどこへやら、エドガーがセッツァーを見上げて爽やかに笑っていた。
「…勝負は最後まで油断大敵だぜ、ギャンブラーさん?」
エドガーが振り上げた膝が、思いきり、その下腹に突き刺さっていた。
セッツァーはかすむ視界でその状況とエドガーの顔とを交互に見、小さく呟いた。
「こ、この卑怯者…」
視界が暗くなる。力が抜ける。なんと言っても急所だ。人類共通の急所なのだ。
さすが王にして敏腕の政治家。汚い。とてつもなく汚い。
実はエドガー自身にも精神的ダメージがかなり返ってはいるのだが、今のセッツァーには何も判断できない。
憎らしい爽やかな笑顔を心の恨みリストに刻みつけ、セッツァーは意識を手放した。
せめてもの反撃を込めて、エドガーの手首をしっかりと握り締めたまま。
「うわっ、離せよ!起き上がれないだろー!?」
先ほどの取っ組み合いで力を果たしたせいで、その体をのけることもできない。
「マッシュ、マッシュ!起きろっての!!」
騒ぎで忘れられていた男は、頭に小箱や花、背に毛皮のマントと兄への愛を飾ったまま、何事もなかったかのように寝こけている。
「くそ、離しやがれこのクソギャンブラーッ!」
王らしくない暴言は、彼自身の閉じた扉によって、誰にも届くことはなかった。
マッシュの頭の上の小箱だけが、開いた窓から流れてくる風にゆれていた。


xxx
セツエド。急所攻撃とかしてるけどセツエド。
セツエドと殺伐って何か似てる。いや、気のせいだった。
騙しあう感じにしたかったけどただの馬鹿二人な気がします。

マッシュ書いてたら兄貴も書きたくなったので、付け足しのように。
でも実はマエド←セツの構図って好きなんだ!(ぉ

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