双子と言ってもそうは似ていないから。[後編:エドガー編] FF6 2009年04月14日 戯れか本気か、それが問題だ。 セツエド前半は[こちら] x x xコンコン、というノックの音に、驚いて体が固まる。「…人の弟に、何やってんだ?」「えーっと、これには訳があってだな…」静かな声音に、押さえ切れない怒りが込められていた。「しかも、かなり荒らした後がある。これはきっと帝国の手の者の仕業に違いないな」「その、えー…。あのだな、」「人の弟を辱めただけでなく、王の部屋を漁り大切な書類を傷つけたその理由とは?」言わずもがな、声の主はエドガーだ。既に部屋の中にいるようだ、バタンと扉の閉められる音がした。いつからいたのか、いや、いつから見られていたのか。セッツァーが、エドガーが彼自身よりも大切にしている弟に、何をしているときから…。靴音がコツコツと、だんだん近づいてくる。それはセッツァーのすぐ後ろでぴたりと止まった。首筋に何かが押し当てられる。「け、剣は反則だと思うぞ俺は」「…答えろよ、空賊」「誰が賊だよ、誰が」「今お前が作り上げた、この部屋の惨状を見ても同じ口が叩けるか?」折り曲げられ飛び散った書類、ばら撒かれた本や小物、落書きされた彼の弟。セッツァーはすばやく頭をめぐらせる。冗談で済ませられる言い訳を探すのだ。それ以外に、彼が生き残るすべはない。「んー…えーっと、そうだ、そうだな。お前を誘き出すための罠と人質だぜ、これは」「弟に落書きされたくなけりゃ、ってか?」「そうだとも。俺の言うことを聞けー!ってな」「…何をすればいい?」「お?」やけに素直なエドガーの様子に、セッツァーは驚く。すっと剣が引かれ、首の後ろのプレッシャーもなくなった。「何だよ、そんな素直にしてると逆に怖ェよ」「マッシュを傷つけられるくらいなら…俺が…」その声に、何か悲壮な決意のようなものがにじんでいる。そういえば、弟に自由を譲るために、兄が国に拘束されることを選んだと言う話を聞いた気がする。犠牲とか、人質とか、弟の関わるそういう言葉に、エドガーは無条件に従ってしまうのかもしれない。「そうかそうか。だったら…」気を良くしたセッツァーは体を反転させ、目の前にいるエドガーを見て、「…ッ!?」「かかったな!」突然の激しい閃光。「サ、サンビームか…っ!?」目を開けていられずよろめいたセッツァーに、正面からエドガーが飛び掛る。「この野郎!卑怯だぞ!」「嘘でも人質とかほざく奴に、卑怯者扱いはされたくない!」しばらく静かに乱闘は続いたが、閃光に目をやられ、のしかかられた体勢のセッツァーに勝ち目はなかった。しかし。「くぅ…っ」「くそ…負けねえぞ…!」その代わり、負けもしない。両者の力は拮抗し、互いの腕を掴みあった状態で固まってしまった。体重と力はエドガーの方があるのだが、セッツァーは足も使って、その体を押し返そうとする。「畜生…!重てェよ砂漠王!」「あ、謝って、フィガロの為に働くなら許してやる…!」「お前の方こそ…、弟に手出しされたくなきゃ言うこと聞きやがれっ…!」「て、手出しって!そういう誤解を招く言い方はやめろ!!」「ほほう?どんな誤解をしたんだ?」その言葉に、一瞬エドガーの力が緩む。そこを見逃すセッツァーではない。腕に力を込め、体を反転させる。「うわっ!?」見事に体勢は入れ替わり、今度はセッツァーがエドガーにのしかかる。「諦めて俺の言うことを聞きやがれ!」「嫌だって言ってるだろ!!」また両者の力が拮抗する。ただし体勢を崩されたエドガーは足が使えず、腕だけで押し返さなければいけない。このままでは力を消耗しあうばかりで決着はつかないと判断し、口論で気をそらす作戦に出る。「どう見ても、お前が悪いだろ!書類ぐちゃぐちゃにしやがって!」「お前が弟に任せて出てくからいけねえんだろ!」「あの書類元に戻すの手伝えよ!フィガロの為に働け!」そこでふと、セッツァーの力が緩んだ。反撃しようとして、しかし訝しんで、エドガーも力を緩めたその時。「…フィガロのためじゃなくて、お前のためになら、動いてやってもいいぜ?」「え?…うわっ!?」掴まれた腕が離され、セッツァーの両腕がエドガーの頭の横に立てられる。顔が近い。落ちるセッツァーの銀の髪が、エドガーの金の髪に混ざる。「セ、セッツァー…、近いよ…」「俺は本気だぜ…?」エドガーが真っ赤になってそらした視線を追い、セッツァーは顔を近づける。「フィガロの為なんてデカい物じゃなく、お前一人の為になら……うごッ!!??」瞬間、蒼白になってその動きを止める。さきほど赤面していたのもどこへやら、エドガーがセッツァーを見上げて爽やかに笑っていた。「…勝負は最後まで油断大敵だぜ、ギャンブラーさん?」エドガーが振り上げた膝が、思いきり、その下腹に突き刺さっていた。セッツァーはかすむ視界でその状況とエドガーの顔とを交互に見、小さく呟いた。「こ、この卑怯者…」視界が暗くなる。力が抜ける。なんと言っても急所だ。人類共通の急所なのだ。さすが王にして敏腕の政治家。汚い。とてつもなく汚い。実はエドガー自身にも精神的ダメージがかなり返ってはいるのだが、今のセッツァーには何も判断できない。憎らしい爽やかな笑顔を心の恨みリストに刻みつけ、セッツァーは意識を手放した。せめてもの反撃を込めて、エドガーの手首をしっかりと握り締めたまま。「うわっ、離せよ!起き上がれないだろー!?」先ほどの取っ組み合いで力を果たしたせいで、その体をのけることもできない。「マッシュ、マッシュ!起きろっての!!」騒ぎで忘れられていた男は、頭に小箱や花、背に毛皮のマントと兄への愛を飾ったまま、何事もなかったかのように寝こけている。「くそ、離しやがれこのクソギャンブラーッ!」王らしくない暴言は、彼自身の閉じた扉によって、誰にも届くことはなかった。マッシュの頭の上の小箱だけが、開いた窓から流れてくる風にゆれていた。xxxセツエド。急所攻撃とかしてるけどセツエド。セツエドと殺伐って何か似てる。いや、気のせいだった。騙しあう感じにしたかったけどただの馬鹿二人な気がします。マッシュ書いてたら兄貴も書きたくなったので、付け足しのように。でも実はマエド←セツの構図って好きなんだ!(ぉ PR